続きです。このシリーズは今回でラストです。
これまでの内容↓
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今回は、バンドパートとオーケストラパートを本格的にミキシングしていきます。
ここまででやっていなかったキック・スネアとトリガーのバランシングや、ベースのDI音とアンプ音のバランシング等も一気にやっていきます。
重ねる系の音を完成させる
各パートをしっかりとバランシングするために、重ねる系の音をバスにまとめてしまいましょう。
重ねる系の音というのは、トリガーやベースのアンプ音のことです。
キックのトリガー
今回はドラム音源側のキックを基準に、トリガーのサンプルでカチカチした感じを足す方向でいきます。
まずはキック2つのトラック(ドラム音源側とトリガーのサンプル)をバスにまとめて、バスをソロに。
そしてドラム音源側のキックのピークが-12dBになるように設定。
それに対して、理想的なカチカチ感になるようにトリガーの音量を調整します。(ここまではバスのフェーダーではなく個別トラックのフェーダーで調整します。)
このバランスは好みでOKです。
そして、必要ならエフェクトで処理します。
今回は、ドラム音源側のキックにSSLのチャンネルストリップでサチュレーションを追加しています。

※キックに対してSSL 4000 Eのサチュレーションを追加している。右上の「THD」という小さいツマミで調整。
トリガーのサンプルにはEQを。
ハイパス、ベースとかぶる100~200Hzのカット、混ざりを良くするために7kHz付近を広いQでカットしています。

※トリガーに対してCubase付属のEQ「Frequency」で調整
それから、バスに対してEQとコンプで最終調整をします。

※キックのバスに使ったEQとバスコンプ。モコモコした180Hz付近とポコポコした500Hz付近を削り、バスコンプで2トラックのまとまりを強くしている。
これでキックの音作りは完成です。
スネアのトリガー
スネアは、太さをドラム音源側で、高めの余韻とモチモチ感(?)をトリガーで足すという方向でやります。
こちらもやることはキックと同じです。
バスにまとめて、ドラム音源側のスネアのピークが-12dBになるようにフェーダーを調整。
そこから好みの音になるようにトリガーの音量を調整していき、必要ならエフェクトで処理するという流れです。
エフェクトは、ドラム音源側にEQとSSLのチャンネルストリップを使用。

※スネアの処理。モコモコした150Hz付近と耳に痛かった4.5kHz付近をカット。4000 Eのチャンネルストリップでハイパスとコンプ処理したあと、サチュレーションを追加している。
トリガーのほうはEQのみで処理しています。

※スネアトリガーのEQ。モコモコした200Hz付近をカットし、後々邪魔になりそうなシャリシャリをローパスで処理している。
バスでの処理は、EQ→バスコンプ→EQという流れでやっています。

※スネアバスの処理。ポコポコした500Hz付近と、コワーンとした耳障りな響きが発生していた850Hz付近をカット。バスコンプでまとめてから、シンバルの邪魔になりそうな高域をVEQでカットという流れ。
スネアの音作りはこれでOK。
歪みアンプベース
DI音とアンプ音を混ぜていきます。
DI音には低音とピッキングの金属感を、アンプ音にはふくよかさと歪みのジャリジャリ感を担当してもらいます。
これもバスにまとめてソロにします。
そうしたら、DI音が-7VUあたりで振れるようにフェーダーを調整。
そこに好みの歪み感になるまでアンプ音を足します。今回は歪みが少し控えめになるくらいがちょうどいい感じでした。
それからエフェクトで調整。
DI音に対しては、サチュレーターを2段掛けしています。

※DI音に使ったSaturation KnobとSSL 4000 E。どちらもサチュレーターとして使っている。
アンプ音には、ゲートでノイズカット→プリアンプで歪みを追加→SSL 4000 Eでハイパス&ローパスと歪み追加→EQで微調整という流れです。

※アンプ音に対しての処理。C1 Gate→REDD→SSL 4000 E→Frequencyというチェイン。
アンプ音のローパスとハイパスは結構大事だと思います。
バスに対しては、音程によって音量感が変わるのを防ぐマルチバンドコンプ→邪魔な帯域をカットするEQ→2トラックをまとめるバスコンプ→コンソールの歪みを追加という流れで処理しています。

※ベースのバスに対する処理
これでベースも完成。重ねる系の音は揃いました。
全パートのバランシング
必要な音作りが終わったことで、全体のバランシングができるようになりました。
ということでバランシングしていきます。
ドラムのバランシング
基本的には前回とったバランスと同じ感じでやります。
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違いは、キックとスネアはバスのフェーダーで調整するということくらい。
それ以外は全く同じです。
まずは、キックのバスのピークが-12dB付近になるように調整。
スネアはキックと同じくらいに聴こえるように。
オーバーヘッドは、アクセントのクラッシュシンバルがスネアのバスと同じくらいに聴こえるように。
ハイハットは、オーバーヘッドに入っているハイハットの定位をはっきりさせる程度に。大きすぎるとクラッシュシンバル等とのメリハリが無くなってしまうので程々に。
タムはスネアと同じくらいに。好みによってスネアよりちょい大きくしたり小さくしたりっていうのも有りです。
これでドラムはOK。
ギターのバランシング
これも前回と同じ。
今回はリードギターがない構成なので、バッキングのLとRの2本のみです。
この2本とも、キックやスネアと同じくらいになるように調整します(2本合わせた音量ではなくそれぞれのトラックがキックやスネアと同じくらいになるように)。この段階ではバスではなく個別のトラックで音量を調整してください。
ベースのバランシング
ベースに関しては、DI音とアンプ音をまとめたバスで音量を調整します。
目安は大体ギターの7割~8割くらいの音量に聴こえるくらい。
ミュートにするとなにか物足りないと感じるくらいがいい感じです。賛否両論ありそうですが……
オーケストラパートのバランシング
完全に前回と同じ内容になるので、前回の記事を参照してください。
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これでバランシングはOK。
エフェクト処理
ここから、いわゆる「ミックス」っぽいことをしていきます。
ドラム
まずは4つあるタムを処理していきます。
タム
タム1~4それぞれのEQはこんな感じ↓

基本的には全て同じ意図で、ハイパスと不必要にポコポコしている部分をカットするという感じです。
そしてコンプでタムの密度と迫力をコントロールします。これも個別トラックでやります↓

オプトコンプで好みな迫力になるように潰しています。
これらをバスにまとめ、そこからタム用のリバーブにセンドを設定します。
このリバーブは適当なルームリバーブでOKです。今回はWavesのIR-Lから適当なものを選んでいます。

うっすらとかけて存在感を大きくします。
このときセンドのフェーダーをプリフェーダーにしておくと、リバーブ音と原音のバランスを簡単にとることができるので、プリフェーダーにしておきましょう。
これでタムはOK。オーバーヘッドにとりかかります。
オーバーヘッド
シンフォニックメタルの場合は、オーバーヘッドをシンバル用マイクとして扱ったほうが楽です。ただでさえ音数が多いので……
ということで最初にいらない帯域をバッサリと切っていきます。

キックの低音の存在感が無くなるまでハイパス、スネアの太さを削ぐため300Hz付近をカット。
残りはタムやスネアのポコポコした感じや、耳に痛いカンカンしたところをカットするためのEQです。
次にコンソールのチャンネルストリップでEQとサチュレーションを足します。

EQで8kHzからシェルフで上げて、サチュレーションも結構ガッツリかけています。
最後にコンプで仕上げです。

クラッシュシンバルのアタックを強調するような設定にしています。
これでオーバーヘッドも終わり。
スネアのリバーブ
スネアの存在感を大きくするためにリバーブを追加します。
やり方は色々ありますが、今回はタムと同じようにIRのルームリバーブを追加するのに留めておきます。
タムと同様、スネアのバスからセンドでスネア用のリバーブに送ります。

タムに使ったリバーブよりも明るいキャラクターのリバーブに、ハイパスをかけて使っています。
送る量は、音像を膨らませるイメージでうっすらと。
疑似ルームマイクを作る
ここまでできたら、ドラムに関係するバスや個別トラック、リバーブ等を全て1つのバスにまとめます。
そのバスからセンドでリバーブに送り、疑似ルームマイクを作りましょう。
ここもWavesのIR-Lでルームリバーブを選んでいます。

そして邪魔な帯域をカット。

このEQはオーバーヘッドにかけたEQと似ていますね。
ローパスは、ルームマイクっぽい距離感を演出するために使っています。素のままだと音が明るすぎる感じがしたので。
送る量は、キットとしてのまとまりが出てくるくらいに。
ドラムトータルの処理
ルームが出来たら、もとのドラムバスとルームのアウトプットを新たなバスにまとめ、そこで最終的なドラムの処理をします。
まずはバスコンプを通して厚みをもたせ、REDDで低音を少しブースト。

そして、このままだとアタックがうるさく浮いているように聴こえたので、トランジェントデザイナーでアタック感を落ち着かせています。

これでドラムは完成です!
ギター
本来であればここからベースの処理にいくんですが、上記のベースの処理でいい具合になっていたので飛ばしてギターに手を付けます。
最終的に2本のギターをバスにまとめるんですが、まずはまとめる前の個別トラックでの処理をやります。
プラグインチェーンは、ゲート→EQ→リバーブ(インサート)→サチュレーター→コンソール→コンプという感じ。これらを2つのトラックどちらにも使います。

画像はL側のギターの処理です。情報量がすごいですが……
ゲートでノイズカット→耳に痛いピークを軽減するEQ→オンマイクに入るルームアンビを再現するリバーブ→サチュレーション(チューブっぽい)→サチュレーション(コンソール)→奏法によって上下するボリュームを安定させるコンプという流れです。
このときのインサートリバーブは本当にうっすらとで良いです。バイパスと切り替えながらでようやく存在に気付くくらい。
最後のコンプで安定しない場合は、マルチバンドコンプでブリッジミュートの膨らみを抑えてからこれらの処理をするといい感じになると思います。
R側のギターも同じような設定で処理しています。
そしてこの2トラックをバスにまとめ、そのバスでも処理していきます。
バスでは、エンハンサー→EQ(カット)→EQ(ブースト)→リミッターという流れです。

エンハンサーでトーンを明るくして、やりすぎた部分をEQでカット。最終的な音のイメージをブーストEQで整え、リミッターで張り付かせるという感じです。
ハイパスがMSでの処理になっていますが、ここは好みでOKです。ギターの低音感は残したいけど左右から聴こえてくるバッキングはタイトにしたいというときには効果バツグンです。
これらの処理が終わったら、ギターにリバーブを設定します。
2本をまとめたバスからセンドでリバーブのトラックへ。

プレートリバーブで明るさを少し足しつつ、存在感を広げるようにしています。
EQは、邪魔な低域とプレートリバーブ特有のコワンとした響きを抑えるために使用しています。
これでギターの処理も完了。
オーケストラ
オーケストラの個別トラックでの処理は前回で終わっているので、今回はバスでの処理をしていきます。
まずは木管・金管・弦のバスを作り、それらに各オーケストラ楽器のアウトプットを設定してください。
それが出来たら処理開始です。
弦
弦のバスの音圧感や音質を、バンドパートと噛み合うように音作りをしていきます。
その後の金管や木管の処理における基準にもなるので、ここでしっかり作りましょう。
まずは、ガッツのある音圧感が欲しかったのでShadow hills のマスタリングコンプをかけています。

Shadow hills がない場合は、WavesのVCompがいいかもしれません。試したことはありませんが……
次にEQです。

4kHz周辺が結構浮いて耳障りだったのでカットしています。これでだいぶ馴染みが良くなりました。
センドリバーブは、前回作った弦用のERに深めに送ります。深めと言っても、フレーズが曖昧になるほどウェットにするのはだめです。
金管
バンドパートはミュートにして、弦を基準に調整します。
今回は、弦に対して少し奥に押し込みつつアンサンブルとしてのまとまりをつけるため、アタックが少し速めのバスコンプをかけています。

金管はこれでOK。EQは必要ありませんでした。
リバーブの量は、弦のリバーブと金管のリバーブが同じくらいの音量に聴こえるように設定します。
木管
これも弦を基準に調整。
コンプ感は個別トラックでの調整で十分だったので、EQで少しブレス感を落として距離感を出しています。

木管もこれでOK。リバーブは弦のリバーブや金管のリバーブと同じくらいの音量に聴こえるように設定します。すると、弦と金管より少しウェットに聴こえるようになります。
オーケストラ楽器のめちゃくちゃつまらんバス処理でした。
リバーブ
最後にリバーブの処理をして馴染ませます。
まずは木管のERにEQ。

2と3のバンドは、リバーブの膨らみを抑えている感じ。8のバンドではピーキーだったリバーブの鳴りを抑えている感じです。
次に金管。同じくEQ。

低音中心にカットして、チューバやホルンで目立つ低音の膨らみを抑えています。
そして弦。これもEQのみです。

金管と同じような考え方で、チェロやビオラの低音が膨らみすぎないように抑えています。
600Hz付近を下げているのは、それより下の帯域を下げたことによって目立ってしまったふくよかさを抑えるためです。
ERの処理はこれで完了です。
最後にリバーブテイルの処理をします。

MSが絡んでいるので分かりづらくなっていますが、ミッドを200Hzでハイパス、サイドを150Hz付近と250Hz付近でカットしています。
こうすることでベースとギターの低音感を優先させることが出来ます。
これでリバーブの処理も全て完了です。
全体の微調整
これで全ての処理が終わりました。
最後に全トラックのミュートを解除して、目立ちすぎている部分や引っ込みすぎている部分を微調整すれば完成です。
もうやることは普通ですね。
終わりに
#3が結構ボリューミーになりましたね……#4に分けてもよかったかも……
これで、僕が最近やっているシンフォニックメタルミックスのルーティンは紹介しきりました。
今後も変化していく可能性はありますが、現段階ではこれで落ち着いています。
誰かの参考になれば幸いです。
今回はここまで。ではでは~ノシ